私はパンが好きだ。
食パンが好きだ。
パン屋さんのパンも好きだけど、高いし買いに行くの面倒だからスーパーの食パンが好き。
卵やベーコンをのせて、いや、納豆チーズもいいよね、今日はバターにしようかな、とか考えながら作るのが好き。最後にチーズに黒胡椒のをのせる組み合わせが特に好き。
最近はイングリッシュブレックファストの紅茶に砂糖小さじ2杯とミルクを入れて、温かい甘めのミルクティーを飲みながらパンを食べるのが気に入っている。
朝はパンが食べたい。
一方で、夫はお米が好きだ。
朝はやっぱりごはんだなと言う。
付き合ってるときは気がつかなかったし、結婚してからも1年くらい気づいてなかったけど、夫は「朝はお米派」である。
これは気が合わないな、と思った。
一瞬、この先やっていけるかな、と思ったけど、そこまで深刻な悩みなのかな、とふと考える。
結局、これは嗜好の話だから仕方がないなと思うようにしている。
お米が食べたいなら好きに食べたらいいと思う。
ただ、私と一緒にパンを食べているときに「やっぱり朝はお米が好きだな」とか言わないでほしい。
娘も食パンが好きだ。
食パンをちぎってなげたり、床に擦り付けたりしながらも、喜んで食べている。
寝起きでぐずっているときもスッと差し出せるので重宝している。
ただ、最近よく残すようになってきた。
バラバラになった食パンのかすがよく落ちていて、私は切なくなる。
食べ残したときは、ヨーグルトと牛乳を大さじ1まぜ、たまに離乳食ストックとして冷凍していた野菜や粉チーズなどをさらにトッピングして、260℃のトースターで3分くらい焼くと、もりもり食べることもある。
私はただ、朝にパンを食べたかった。
娘が食パンをよく食べるようになってから、食パンは娘用になった。私も食べたいけど、私が食べると減ってしまうので食べるのをやめた。
代わりに菓子パンや惣菜パンを買った。
さつまいもペーストやチョコチップのはいった甘いパンや、メロンパンも好き。あと、ソーセージ入りのパンもかなり好き。
すると、夫が「今日はパンが食べたい」と言った。どうやら夫は甘いパンやソーセージの入ったパンが好きなようだ。あれだけ米がいいと言っていたのに、私のパンを奪うようだ。
かわいそうなので仕方なく夫に分け与える。
私は納得していない。
今朝も、私はただ、パンが食べたかった。
娘の食パンを1枚分けてもらった。
久しぶりの食パンだ、どうやって食べようかと迷うことなくすぐに決まった。
真ん中をくぼませ、3枚のベーコン、まわりにマヨネーズ、卵を落とし、事前に茹でてあったブロッコリーとチーズ、黒胡椒を振りかけた。
260℃のトースターで3分。
その間にミルクティーを作る。
うん、卵は半熟で、最高のできだ。
ふと目線をあげると娘がリビングのカーペットの上に離乳食をひっくり返しているのが見えた。
そしてドライヤーの音が廊下から聞こえてきた。夫がシャワーを終えて部屋に入ってきそうな雰囲気があった。
でも、私にとって、この朝のパンタイムはすごく大事で、熱々のトーストと紅茶を飲んで、ふぅ…とする時間がほんとに癒されるので何にも邪魔されたくないのである。
嫌な予感がしつつもトーストを2/3まで食べ進めた。最高である。
そして夫がリビングに入ってきた。
「わ、美味しそうなトースト。いいな」
また私のパンを奪おうとしているのか?でも家にはパンはもうない。夫にあげないのもかわいそうなので仕方なく「一口食べる?」と聞くと、何かを察した夫が「大丈夫、、、るくちゃん気に入ってそうだからいいよ」と遠慮してくれた。
私は安堵した、でも、それは束の間だった。
冷蔵庫や冷凍庫を一通り物色した夫がこう言った。
「なんか…朝に食べれそうなものある?」
それは私のパンタイムが終了したことを意味した。
というか、自分の朝ごはんくらい自分で見繕ってくれ、と思ったけど、いつも用意してあげて甘やかしていた私が悪いのかもしれない。
昨日作って夕飯に出し忘れたポテトもちを出し、温めた。それくらい自分でしてくれ、、と思った。
そしてお茶がないだの、なんだのやや喧嘩して、なんとか準備した夫が出発するので娘を抱っこして見送る。
そして、続きを食べようと思ったら、娘がしまじろうを見ると主張している。つける。
今度は犬がおえおえ言っている。ごはんを自らボイコットするのだけど、空腹になるとおえっとしてしまうという、とてもデリケートなわんこなのである。リビングのカーペットが汚れた。そのまま掃除する。
引き続き床に散乱していた娘の離乳食を拾って、ついでに床掃除。
すると、今度は洗濯機が「終わったべ〜」と言っている。洗濯物を干す。
あれよこれよとしているうちに2時間が経過した。
ふとテーブルを見ると、冷めたミルクティーと食べかけの1/3トーストが机の上にのっていた。
食べかけのパンを見た途端、なんだか急につらくなった。
パンなんか、食べるのに10分もかからないじゃんか。私は、その10分くらい、何にも邪魔されずに食べたかった。ただそれだけなのに。
残っていたパンを口に入れ、冷めたミルクティーを飲んだ。パンはカチカチでもう美味しくない。
私の求めていたものは、すでになくなってしまっていた。
まあこんな日もあるよね、と思いたいけど、そう思うにはまだ時間がかかりそうだ。
なんか悲しいお話になってしまった。