るくさんのページ

OLは よめに しんかした!


ホームステイの思い出を聞いてほしい.

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涼しくなってきたこの季節にどうしても思い出してしまうので書きます。

記憶のトリガーは、澄んだ冷たいにおい、涼しく乾いた風、そして、シャララと鳴る綺麗なウィンドチャイムの音..。

 

まだ20歳になる前のお話、もう10年近く前になっちゃうけど。大学2年生の夏、私はオーストラリア-ブリスベンの空港にいた。

 

オーストラリアに降り立った最初の感想は、「寒い」だ。私は完全に季節感を間違えていた。南半球なので、日本は夏だけどオーストラリアは冬。そんなことは分かっていたけど、もうすぐ春になるしそんなに寒くないだろうなんてお気楽に思っていたのであった。当日はレギンスに薄いキャミワンピ、薄手のパーカーを着ていた。寒い。寒い。秋を思い起こすような肌寒さだ。早急に服を買いに行く必要があるように思った。

 

そして、なんやかんやで、前もって手配しておいたホームステイ先にお世話になることになる。家族の名前は、申し訳ないけど忘れてしまった。何となくな感じでフェイクを入れさせてもらう。それぞれの家族と、その思い出とともに紹介しよう。

 

と、その前に、前提なんだけど、私は当時全然英語が話せなかった。TOEICも450点くらい(今は850点くらいあるヨ)。よく海外に一人でぴゅーんと行こうと思ったものである。そして、私はとてもシャイであった。英語を話して間違えるのが恥ずかしいという、典型的な日本人であった。このことをよく覚えておいてほしい。

あと、私はリスニングが特に苦手だったうえ、ブリスベンの発音はとてもわかりづらくて苦戦した。日本ではアメリカ英語で習うと思うんだけど、要するに、発音が全然違うのだ。例えば、dayという単語がある。カタカナで表記すると「デイ」って感じだと思うんだけど、ブリスベンだと「ダイ」になってしまう。die(=死)みたいな発音になるのだ。不思議。ブリスベンの学校の先生は「オーストラリアの発音は、こう、馬みたいに発音するんだよな、全部オーイって発音になっちゃうんだよな、hahaha」と言っていた。(ディスってない?)

 

 

それで、早速家族とその思い出。

お父さんはケイシー。優しいんだけどよくしゃべる。しかも早口。着いて数日は色んなところに連れて行ってくれた。サドルが小さい自転車で早朝のサイクリング、橋を渡ったり。早朝のマーケットに車で行ったり。毎週マーケットで花を買って奥さんにプレゼントしてるんだって、素敵。そういえば、マーケットで食べたドーナツのクリームがケイシーのほっぺたについてたんだけど、なんとも言い出せなくて家までそのまま帰ってきてしまったことをいつまでも申し訳なく思っている。

あと、私はよく迷子になった。バスに乗って学校に行ってたんだけど、バスの番号が覚えられなくて、よく違うバスに乗って家に帰れなくなった。バスを降りるとそこは見知らぬ土地。帰り方もわからずとても心細かった。1度だけ耐えきれず、ケイシーに電話して迎えに来てもらった。泣いた。

食事の時間に主導権を握るのはいつもケイシーだった。ケイシーが基本的にはしゃべってて、誰かに話をふる、返事をする、またケイシーが話す。私の実家では、話したい人が話したい話題を提供するスタイルだったので、全然違うんだなーと印象的に思った。

 

お母さんは、キャシー。おっとりしていて比較的話すのがゆっくりだったのが助かった。食事の手伝いをしようとして、ジャガイモの皮むきをしたら、もっと深く剥きなおされたのがいい思い出(、というのは嘘で、言ってくれたらやったのに、、と切なかった)。大人しい人で、あまり会話が弾まなかったな...。

 

長男のデニス。高校生だったと思う。朝いつもミロを飲んでから学校に行ってた。背は高かった。今思うと、年上のお姉さんと一緒に住むことになって、思春期で複雑だったかもしれない。私がルールのわからないラグビーをテレビでぼんやり見ていると、横で少し解説してくれたが、英語がわからなくて困惑した。でも話しかけてくれたことは嬉しかった。

あと、一度、スプーンを出そうとしてキッチンの引き出しを開けたら、「バーーーン!!!」と大きな音を立てて引き出しが壊れ、カラトリーが床に投げ出されてしまったことがある。家具を壊してしまった、と青ざめたところにデニスがたまたま現れた。「たぶん私が壊した...」と素直に打ち明けると、「違うよ、最初から壊れてたと思う、大丈夫」とフォローしてくれるような優しい青年であった。

一番の思い出はこれ。私の部屋の横が洗濯所で、いつものように洗濯しようとしたら、部屋の奥から「Heeeey!!!!」とデニスの声が聞こえてきた。よくわかんなかったけど、直感的に、謝って部屋からすぐに出た。なぜ出たのかと言うと、よく思い出してみると、洗濯所のドアが最初閉まっていたからだ。ドアが閉まっている=「入ってはいけないという合図」らしい。日本にはそんなルールないので私はよく間違って開けて入ってしまっていた。別日に、なんか嫌な予感がして、洗濯所の奥を確認すると、なんと、そこにはポツンと便器があったのであった。え!?!?なんでここに便器が!?部屋の隅に!?…ということは... どうやら私は彼の... ウーンタイム中に部屋に入ってしまったらしい。マジか!!え、ごめん!!!ご...ごめんん!と心の中で再び謝っておいた。

 

次男のエリック。たぶん中学生。童顔で可愛らしく爽やかなお顔立ち。絡みはほとんどなかった。一度、自室でドアを開けたまま2chを見ていたら(日本語が恋しくて、ついついね…)、ドアを開けてる=「入ってよし!」と思ったエリックが夕飯に呼びに来てしまったことがある。そのときいかがわしいバナー広告が表示されていたので、それらが見えてしまったかもしれない。ち、違う!これはPCが勝手に表示するやつだから...!!!と心の中で弁解した。そして、どうか見ていませんように、と願った。

 

末っ子長女のアニー。小学生。元気でとてもかわいい。ブリスベンに着いてすぐ彼女の風邪がうつってつらかったけど、うつった私が悪いから!!大丈夫!!笑

アニーは仲良くなろうと小学生なのに頑張ってくれた。本当は私が歩み寄るべきなのに、、ごめん、、。アニーの誕生日パーティーをお家でやるらしく、招待状をくれた。嬉しかったけど、そこには、「仮装をしてきてね!」と書かれていた。私はシャイでノリの悪い大学生。仮装はとてもハードルが高いヨ。知らない土地で買い物も分かんないヨ。小学生に混ざるのなんだか恥ずかしいヨ。ということで、当日は遠くから見守る程度で仮装せずにちょこんと参加(?)させてもらった。

あと、これもごめんなんだけど、一度トイレを開けたらアニーがおりまして、、ドアが閉まっている=「入ってはいけないという合図」を忘れたことによって起こった悲劇である。日本のトイレは鍵がついてるから安心ダナー、うん、ホントごめん。。このときばかりは、自分が物静かな感じの女性であったことを幸運に思った。

 

 

その他のエピソード。箇条書きでざっくりと。

  • 週に1回くらいピザをとる日があった。日本だと皿を用意して取り分けながら食べる家庭が多いんじゃないかな。ブリスベンでは節水をやっててね、食器は極力使わない方向らしい。箱を開けて、ピザを取ったら、次の人に箱を渡すスタイルだった。エコ。
  • 夜ご飯を食べるときは、最初に食べる量を申告する。キャシーが「これくらい?」と最初に盛り付けてくれるんだけど、それがなかなか難しい。日本だと大皿から取り分けたり、お替り制度があるけど、それがない。食べきれなかったら困るので、少な目で申告して、翌朝お腹が空きすぎて冷蔵庫のパンを大量に食べて迷惑をかけたりしていた。
  • 子どもも家事を何か1つ担当する。一番年下のアニーですら食器洗いを任されていた。えらい。私は何も任せてもらえなかったヨ。
  • みんな家の中では素足。基本土足の文化なので、靴でも履いてるのかな~と思ったら、すごく寒いのに素足。 私は足が冷えるし、足の裏が汚れるのが嫌でスリッパ履いてた。部屋は外みたいに寒い。私の部屋は横のドアを開ければすぐ庭だったし、隣はガレージでとにかく寒かった。なのに、みんな素足。
  • 虫がいっぱい。部屋に大きいクモの巣とクモがいた。すご~い。あと、蟻とか歩いてた。けど次の日消えてた。キャシーが蟻に殺虫剤してくれたみたい。でも巨大クモはそのままなので一緒に相部屋してた。
  • シャワーは3~5分以内。これも節水のため。そんな短時間でシャワー浴びれるのかな?って不安に思った。私はたぶん、頑張っても7分はかかってたと思うごめん。家の外のメーターで1ヶ月にどれくらい使ったか調べられるらしい。ごめんめん。

 

 

私はこの家族のみんながいい人だってわかってた。けど、ホームステイは1ヶ月で終了することにした。本当は出来るだけ長くという話だったのだが、私は続けることができなかった。愛が、家族の愛が眩しく、その中に入っていけなかったのだ…という言い訳である。

家を出る前日、アニーがキャシーのもとで泣いていたことが印象に残っている。理由はわかんないけど、もしかしたら私が去ることが原因だったのかもしれない。もしくはただ学校で嫌なことがあったのかもしれない。でも私の前で泣かなかったというのは、そこまでの仲になれなかったってことなんだと思った。たった1ヶ月だから当然か。

 

私の友人でホームステイした子が、いまでもたまにオーストラリアに訪れて、第2の家族のようにホームステイ先の家族と親しくしている姿を見かけることがある。それを素直に羨ましく思った。

もうちょっと仲良くなれてたら、こうできてたらな、というのはふとしたときに思う。でもこれは性格とか相性とかも関係してくるので、この結果に終わってしまったのは必然だったのかもしれない。一度キャシーのお姉さんに会ったことがあるんだけど、すごく話しやすくて「この人のお家にホームステイしてたらな」なんて思ってしまったことがある。

でもこのお家にホームステイしたことは後悔していない。このような文化の違い・家庭の違いを知ることができたのはとても貴重だと思っている。得体の知れない、英語もろくにわからない女の子をお家に置いてくれたことに感謝している。

 

そしてその後、私はルームシェアをすることになった。アジア圏の友人のツテで一室を借りられたのだ。マンションの4階で、暖かく、節水もしなくて良いと言われていたので安心してシャワーができた。ルームメイトとはほどよく距離感があり、友好的な関係を保てた。控えめに言って快適だった。ごめんめん。

 

季節が巡ってもふとした瞬間に思い出される、ひどく切なくノスタルジックなお話でした…。しっとり。

それではまたにー☆

 

今週のお題「秋の空気」